『フジ子ヘミングの「魂のことば」』 of Book to Me

HOME > books > 『フジ子ヘミングの「魂のことば」』

　「フジ子・ヘミングは癒されるよ。」と友達に言われて購入したのが、『フジコ・ヘミングの奇蹟　リスト＆ショパン名曲集』でした。このCDの最初に演奏されている「ラ・カンパネラ」（リスト）は、その後彼女の代名詞ともなりました。演奏がうまいかどうかは賛否両論があるようですが、当時かなり落ち込んでいた私の心に染み渡ったのはそういった賛否両論を超えた私の中でのリアリティでした。その後このCDは私にとっては魂が行き詰ったときの沈黙のための一枚となっています。

　フジ子・ヘミング氏は、“魂のピアニスト”と称されることがあるように、その運命は数奇なもので、とても過酷なものだったようです。若くして掴んだチャンスも、不意におとずれた風邪による聴力の喪失によって水の泡と化す。そういった絶望の中にあっても生きることを決して諦めなかったその彼女の奇蹟があるからこそ、今日魂を揺さぶる演奏ができるのでしょう。

　本書はフジ子・ヘミング氏の言葉を集めたもの。一ページに短い一文が掲載されている、シンプルなもの。その一つ一つの言葉の中に、彼女の奏でる音楽同様に、勇気や希望を見出すことができる力があります。
　本書の装丁はハードカバーの新書サイズで、彼女の筆によるきれいなイラストで満たされています。中にも、彼女が好きな猫の絵などがあり、本自体を所有する喜びを感じさせてくれる、丁寧な作りになっています。

　いつでも手に取れるところに、この1冊置いてみてはいかがでしょうか。

LinkIcon 『フジ子・ヘミングの「魂のことば』
著者　フジ子・ヘミング
発行　清流出版
初版　2002年4月15日
価格　1260円

著者のご紹介

イングリット・フジコ・ゲオルギー・ヘミング
ピアニスト
ピアニスト大月投網子と、ロシア系スウェーデン人デザイナーフリッツ・ジョスタ・ゲオルギー・ヘミングを両親としてベルリンに生まれる。５歳の時に、一家で日本に帰国。母の手ほどきでピアノを習い始め、１０歳でレオニード・クロイツァーに師事。
20代の頃、フランスの世界的ピアニスト、サムソン・フランソワは、日比谷公会堂で偶然彼女の演奏を聴いて、ショパン、リストの演奏を絶賛した。
青山学院から東京藝術大学に進み、卒業後ヨーロッパ留学を夢見るが、１８歳で国籍を失っていたためすぐには叶わず、２９歳で避難民としてドイツ留学を果たした。ベルリン国立音楽大学卒業後、ウィーンでパウル・バドゥーラ・スコダ氏に師事し、今世紀最大の作曲家・指揮者の一人と言われるブルーノ・マデルナのソリストとして契約する。
１９６９年、バーンスタインはじめ、ニキータ・マガロフ、シューラ・チェルカスキー、ブルーノ・マデルナらの推薦によって、ウィーンでのリサイタルが決定。しかし、リサイタル直前に風邪で聴力を失い、やむなくすべてのコンサートをキャンセル。
その後、ストックホルムで耳の治療に専念する傍ら、音楽学校の教師の資格を得、ピアノ教師をしながら演奏活動を行う。現在も右耳の聴力は完全に失ったまま、左耳の聴力のみ４０％までに回復した。
母の死後、９５年に帰国。９９年のNHKのドキュメンタリー番組をきっかけに注目を集め、デビューCD「奇跡のカンパネラ」は、クラシック界では異例の５４万枚以上という売上を記録した。
米国同時多発テロ事件被災者のために、２００２年１年間の新アルバムのCD印税をすべて寄贈。また、動物愛護団体、アフガニスタン避難民のためにもたびたび寄付している。主な著書には『フジ子・ヘミング魂のピアニスト』『運命の力』等があう。
著者のHP　フジ子・ヘミング公式サイト

その他の著書

おすすめCD

ページトップへ