デザイナー、アートディレクター、ブランディングデザイナーと、幅広く縦横無尽の活躍をしている佐藤可士和氏。美大でグラフィックを学び、博報堂で経験を積み、そして独立後は押しも押されぬ存在となる。六本木の国立新美術館のロゴマークをはじめ、普段何気なく目にしているものの中に、佐藤氏の手がけた作品がけっこうあったりする。そんな作品の一部の具体例は、本書の中でも語られており、巻末にはそのカラー写真も付いています。
本書は佐藤可士和氏の思考様式を、本人自らが語ったもの。とてもわかりやすい内容でありながら、その奥は深い。一つのテーマについて絵や図をまじえながら、どれも読者に印象深く伝えています。特に「これ!」という強烈なインパクトはないのですが、じんわりと伝わってくる上品なクリエイティブシンキングは、佐藤可士和氏の作品と同様な趣があります。読んでいくとともに、佐藤可士和氏がとても身近なものに感じられるようになるのですが、おそらくそれは、佐藤氏自身がいつも念頭に描いている“お茶の間目線”からくるのだろう。
佐藤可士和氏は、最近はブランド全体の価値を構築するブランディングデザインの仕事が多いそうです。ブランディングデザインはコラボやチームで作り上げていくディレクションが主な仕事になるようで、より全体を俯瞰する力が必要だそうです。その俯瞰する佐藤氏の視点は、デザインの仕事に直接携わっていない普通の人にとっても、より豊かな生活空間を造り、よりたのしい人生設計を組み立てるときのいいヒントになるような気がします。
本書のデータ
『佐藤可士和のクリエイティブシンキング』
著者 佐藤可士和
発行 日本経済新聞出版社
初版 2010年6月25日
価格 1575円
著者のご紹介
佐藤可士和
アートディレクター/クリエイティブディレクター
1965年東京生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。博報堂を経て「SAMURAI」設立。国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、グローブライド、LISSAGE、丸の内エリア(三菱地所)のクリエイティブディレクション、NHK教育テレビ『えいごであそぼう』のキャラクター(ケボ&モッチ)デザインと番組アートディレクション、幼稚園や病院のプロデュースまで、対象となる企業、組織の本質をつかみ、その存在を際立たせるコミュニケーション戦略とデザイン力で常に注目を集める。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか多数受賞。明治学院大学、多摩美術大学客員教授。
著者のHP KASHIWA SATO.COM
その他の著書
『佐藤可士和の超整理術』2007年
『佐藤可士和×トップランナー31人』2009年
『仕事学のすすめ』2009年
『可士和式』2010年
『BEYOND-KASHIWA SATO』2004年
『佐藤可士和 gggBooks67(スリージーブックス 世界のグラフィックデザインシリーズ67』2004年
『劇的クリエイティブ講座』2009年
『佐藤可士和の仕事と周辺(Artist, Designer and Director SCAN』2001年
『しょうちゃんとちきゅうくん?ずっといっしょにいたいね』2010年
『GRAPHIC』2004年
参考になりそうな本
『SAMURAI 佐藤可士和のつくり方』 佐藤悦子著 誠文堂新光社 2007年
『ポパイ特別編集 佐藤可士和 デザインぺディア』 マガジンハウス 2008年
『1冊まるごと佐藤可士和 2000-2010』 ペン編集部 阪急コミュニケーションズ 2010年『1冊まるごと佐藤可士和』 ペン編集部 阪急コミュニケーションズ2007年
『99人の小さな転機のつくりかた』 ビッグイシュー日本番編集部 2010年
『DESIGN OFFICE こんなオフィスで働きたい。』 エイ出版社 2007年
本書に掲載されている作品
「キリンビール企業CM」
「LISSAGE(リサージ)」 カネボウ化粧品グループ会社
「SUIT SELECT」 コナカ
「キリンチビレモン」 キリンビバレッジ
「ユニクロ グローバル戦略」
「グローブライド」
「ふじようちえん」
「東京都交響楽団」
「楽天タワー」 楽天
「キッズケータイ」「SPORTS EDITION N-07A」