HOME > books > 『ビジネスで一番、大切なこと』 ヤンミ・ムン

businessdeitiban.jpg この本のタイトルの副題に、「消費者のこころを学ぶ授業」とありますが、まさにこの副題に本書の内容が要約されていると思います。本書は、消費者の心の中で起きている消費に対する心境を紐解きながら商品を分類していきます。

 ビジネスでは他者との差別化ということがよく言われます。例えば電気製品であれば、“業界初の機能!”“世界初の技術による!”といった言葉がたくさん使われ、最先端であることを強調します。しかししばらくすると他社もその機能を追加していき、それを繰り返していくうちに、その製品はどんどん多機能化し、ついにはどの製品も区別がつかないほどになると言う、差別化を計りながらも同一化していくという矛盾が生じたりします。これはその製品の成熟期によくあることですが、こうなると消費者は製品選びに辟易してしまうことも少なくありません。

 現代の成熟した国においては、マーケットもすぐに飽和状態になり、多機能や機能の優劣で差別化するのは困難になっています。こういった状況で道を切り拓いて成功するには、物の観方を変えていく必要があります。一般的には発想の転換といわれるものですが、実際にそれを導くのは大変なこと。本書では、そういった発想の転換に成功した商品や企業を例に挙げながら、消費者が求めるものとは何か?を考えていきます。


 本書の内容をまとめると、

  • 「リバース・ブランド」 世の中の流れと逆を行くもの。
  • 「ブレーク・アウェー・ブランド」 既存の分類を書き換えるもの。
  • 「ホスタイル・ブランド」 好感度に背を向けるもの。

の三つの解説になると思います。こうして整理してみるとごく簡単に見えますが、実際にやってみるとそう簡単なことではありません。しかし本書を読み終わってスーパーなどの商品の並びを見ると、なるほどと思うことも少なくありません。大きな企業に勤める方にも、自営業の方にも参考になることが多数ある著作です。

本書のデータ

LinkIcon『ビジネスで一番、大切なこと』
著者 ヤンミ・ムン
翻訳 北川知子
発行 ダイヤモンド社
初版 2010年8月26日
価格 1500円(本体価格)

著者のご紹介

ヤンミ・ムン
ハーバード・ビジネスクール教授
MBA課程、およびエグゼクティブプログラムで教鞭をとり、その優れた指導で多くの賞を受賞しているほか、マイクロソフト、インテル、ソニー等、ケーススタディにも定評がある。中でもスターバックスのケースは、ハーバード・ビジネススクールで2009年のダウンロード数ナンバーワンを誇る。
イェール大学卒、スタンフォード大学にて修士号、博士号を取得。現在、夫と二人の息子とともにマサチューセッツ州ブルックリンに住む。Harvard Business Reviewへの寄稿論文も多数。本書が、初の著書となる。

本書の中に出てくる本

『ご冗談でしょうファインマンさん(上)』2000年
『ご冗談でしょうファインマンさん(下)』2000年
『キャズム』2002年
『有閑階級の理論』1998年
『マネー・ボール』2006年

訳者紹介

北川知子
奈良女子大学大学院修士課程(社会学専攻)修了。
国立国会図書館勤務を経て、翻訳業に従事。訳書に、『三人にひとり-生命の謎を解くがんと科学の未来』『ダライ・ラマ-平和のために今できること』『静かなる改革者-「しなやか」に「したたか」に組織を変える人々』『科学者が「起業」で成功する方法』がある。